20代、30代の頃、アジアやヨーロッパを旅して日本を外から見る機会がありました。キチキチとした日本の建築とは違う異国の建築物を見た時のあの衝撃は何だったか?と考えると、きっとそれは作り混み過ぎないことや、全てが手作りで、それぞれの物に愛情があったからだと感じました。
旅をして気付いた日本の良さは、職人の技術の高さや日本独自の美的感覚でした。私の建築の軸には常に日本古来の伝統的な建築の存在があります。何かを設計する際、詳細部の納まりを思考する際は古来の建築をイメージします。敷居一枚だけを取り付けて大工が帰る一日。その一枚への想いを想像するだけでも鳥肌が立ちます。
時代と共に、既製品は日本に根強く染み付いてしまいました。ただ、それを省くことで住まいの表情は全く別物になります。人が作る物が家という存在である限り、人の手によって作られたものにしか出せない何かがあるはずです。古い物にしか出せない色、艶、時代を経て更に良くなる物が本当に良い物、つまり本物だと私は信じます。そして、同じものを大量に作り出す仕事よりも、唯一無二な物を一つ作り出す事の方が意味があると信じています。
